高校生の頃から、ひどいニキビに悩まされていた。思春期にはつきものだと今では思うものの、二十歳を過ぎても、二十歳半ばを過ぎてもおさまらなかった。
コンプレックスの反動か、学生時代には生意気にもデパコスを漁っていて、すこしでも綺麗になりたい、綺麗に見せたいとばかりに高価な化粧品を、美容部員さんたちの言うままに購入した。試しては失敗し、失敗しても懲りずにまた別の化粧品カウンターへ赴いた。けれどそれで、父親にすら「ケロイドみたいな肌だな」と言われた症状はおさまらなかった。
もちろん皮膚科にも行った。けれど劇的に良くなるということもなく、肌の醜さをファンデーションやコントロールカラー、コンシーラーで覆い隠す日々だった。
きっかけは些細なもので、当時よくテレビに出ていた美容家が「お化粧はオリーブオイルで落としなさい」と言っていたことだった。
化粧落としとは盲点だった。いつも専用のクレンジングリキッドで、刺激もかまわずガシガシと肌を擦りまくっていたが、物は試し、台所のエキストラバージンオリーブオイルを拝借し、半信半疑で化粧の顔にまんべんなく塗り、蒸しタオルで拭ってみた。しばらく続けてみた。
するとなんと、あれだけ悩んだ肌荒れ、ニキビがみるみる治っていくではないか。苦しく工面しながらデパコスに注いでいたお金はなんだったんだろう。
ある日、台所のオリーブオイルを借りようとすると母親に見つかった。けれど事情を話すと咎められるでもなく、「それならもっと清潔なものを買うといいよ」と言われただけだった。
それからというもの、私の化粧落としといったら日本薬局方のオリブ油だ。さいわい肌荒れ知らずである。あれから歳を経たせいでシワは増えても、吹き出物は滅多にできない。当然といったら当然かもしれないが、たかが数百円で安心させてくれるオリブ油に、どんなデパコスよりも信頼を置いている。